eawagでは、森林の研究も続けていくが、湖の研究も行う。
スイスには大小数多くの湖がある。
それぞれの湖は、容量と形態、生産性、植物・動物プランクトン群集と魚類群集構成、さらに漁獲や汚染といった人間社会からの影響が異なり、独特の生態系を作り上げている。
eawagの研究者は、これらの湖で地道な研究を続け、湖の個性と歴史をさまざまな角度から理解しようとしている。
魚類群集にフォーカスを絞り、30年以上にわたる研究を蓄積してきたルディに、彼の仕事について詳しく話を聞いてきた。
湖はそれぞれ歴史が異なるといったが、一点すべての湖が共有する履歴がある。
富栄養化である。
人口増加や人々の生活スタイルの変化に伴い、リンの湖への投入量は20世紀半ば以降急激に増加、1970年代にピークを迎え、その後汚水処理の技術導入によってほとんどの湖で減少した。
リン濃度が過剰になると、湖は富栄養化し、藻類の繁茂、水中での酸素欠乏、悪臭、といった問題が生じる。
こうした問題をスイスのほとんどの湖は一時期経験している。
リン濃度が減少した結果、もとのレベルに戻ると、湖生態系も過去と同じ状態に回復するのか?
リン濃度の変化は、食物網を通じてプランクトンおよび魚類群集に波及し、生態系の構成を改変する。
そして一度改変された生態系は、再びリン濃度がもとのレベルに戻っても、再生されない、つまり不可逆な変化が生じた可能性がある。
もしそうなら、特徴が異なる湖間で変化のパターンに共通性はみられるか?
ルディは、過去30年にわたる魚類群集の変化を推定するための漁獲量データを蓄積されている。
さらに、長期にわたる植物・動物プランクトン群集の時系列データもある(データシート全部ドイツ語なのですが)。
それらを統合して、湖生態系理論と合わせてみると、上の問いに対してエキサイティングな答えが出せるのではないか?
と思いました。